私たちThe DECKは、多様な才能と価値観が交差する「コワーキング」を通じて、地域社会と世界を繋ぐ役割を担いたいと考え、2024年より年2回、デジタルノマドプログラムを実施しています。4回目となるプログラムを2025年11月30日から12月5日までの6日間、和歌山県白浜町でリゾートホテルリトリートプログラム「Digital Nomad Week SHIRAHAMA」を実施しました。今回のプログラムは、過去開催したプログラムの中で最もThe DECKのビジョンを体現する、地域連携型リトリートプログラムとなりました。
本レポートでは、単なる観光促進に留まらない、長期滞在の外国人リモートワーカー(以下、デジタルノマド)とのコミュニティ創出という観点から、その具体的な成果と、地方自治体・宿泊事業者、そして各地域のコワーキングスペース事業者の皆様が、次なる一手として取り組みたいと思った際、参考にしていただけそうな事例を紹介します。

なぜ「国際交流型ワーケーション」が地域に長期的な利益をもたらすのか

本プログラムの参加者は、海を臨むリゾートホテル「Crystal Exe Nankishirahama II」に滞在し、通常の旅行では得られない「仕事」と「暮らし」が一体となった体験をしました。
受け入れ地域側にとって、デジタルノマドを誘致するリトリートプログラムの魅力は3つ挙げられます。

①長期滞在による消費拡大と地域経済への貢献:単発の観光ではなく、中長期的な滞在による地元飲食店やサービスの利用機会が増加。

②富裕層・高スキル人材の誘致:完全個室、キッチンやランドリー付きの高品質な環境を提供することで、デジタルノマドを安定的に受け入れ可能。オフシーズンの稼働率向上に直結。

③「働く場」の確保が関係人口創出の基盤:海辺の絶景と仕事環境を両立させることで、単なる保養地ではない「ビジネス拠点」としての魅力を確立。ただ単に、オフィス家具を揃えるだけではなく、参加者の困りごとに寄り添うコミュニティマネージャーの存在が鍵。

写真右下のコワーキングスペースは、なんと今回のプログラム参加者が到着した翌朝にプレオープンしました。新しいオフィス家具に囲まれ、柔らかな自然光の中で集中して仕事ができました。また、プログラム初日に白浜町長から温かい歓迎をいただいたことは、参加者にとって「地域から歓迎されている」という強いメッセージとなり、地域への関心と愛着へと結びついたと思います。

(写真左から、リゾートライフ株式会社会長柴山勝也氏、白浜町長 大江康弘氏、和歌山県白浜町の銘菓「かげろう」を手掛ける株式会社福菱代表 福井浩一氏、そしてThe DECK株式会社代表 森澤友和)

 

地域固有の資源を活用した「深い接続」のデザイン

Digital Nomad Week SHIRAHAMAの最も重要な成果は、地域資源を最大限に活かした「深い国際交流」の実現です。

地域の精神性に触れる:勝幸寺での文化体験

今回のプログラムでは、文化体験の場として滞在先ホテルの敷地内にある勝幸寺(Shokoji)と連携しました。寺院という空間を、座禅、書道、生け花、そして太鼓演奏といった日本の精神文化を深く学べる場所として開放しました。さらには、お寺でも仕事ができるようwifiが完備されていることがデジタルノマドにとって魅力です。

地域の寺社仏閣や文化施設を「体験の場」として活用することで、既存の観光ルートでは提供できない高付加価値な地域体験を提供することができました。これは、参加者であるデジタルノマドにとっても、彼らが自信のSNS等で発信する際に、「日本らしい奥深さ」を伝える強力なコンテンツとなります。

地域キーパーソンとの本音交流

Day3には、白浜観光施設関係者アドベンチャーワールドの園長、地元飲食店の方々など、地域の未来を担う方々を交えた交流会を実施しました。ちゃんこ鍋やBBQ、餅つきといった「食」を通じた体験を通じて、ビジネスや生活に関する本音トークセッションが繰り広げられました。

デジタルノマドは単なる観光客や消費者ではなく、「ビジネスパートナー」や「協業者」になり得ます。地域の課題やビジョンをオープンに語り合う場を設けることで、国際的な視点を持つデジタルノマドとの協業プロジェクトの種や、新たなビジネス機会が生まれる可能性が高まります。

世界遺産「熊野古道」での精神的なリトリート

世界遺産・熊野古道のハイキング(発心門王子〜熊野本宮大社)は、参加者にとって日本の歴史と自然の力を体感する「精神的なリチャージ」となりました。参加者アンケートではこの熊野古道ハイキングもとても高く評価されました。地域固有の「自然遺産」や「歴史資産」を、単なる観光地としてではなく、「自己と向き合う」「仕事のインスピレーションを得る」といったリトリートの場として位置づけることで、「ウェルネスツーリズム」に関心を持つ層から評価を得ました。参加者の中には、もともと日本の歴史や日本人の考え方に関心を持っていた人が何人かいて、熊野大社の神社関係者やガイドが話す歴史秘話に引き込まれ、近い内にまた訪れることを志した方もいます。

地方から世界へ—デジタルノマドコミュニティが生み出すインパクト

このDigital Nomad Weekを通じて、参加者から多く聞かれたのは、旅を通じた「オープンマインド化」の重要性です。異文化に触れ、多様な価値観の中で過ごすことが、彼らの働き方・生き方を豊かにしています今回の白浜での成功は、地域事業者であるResort Life Co., Ltd.「白浜を盛り上げたい!」「白浜の魅力を国内外の人に体験してもらいたい!」という熱意と、The DECKが持つ「コミュニティ構築力」と「国際ネットワーク」の融合により実現しました。
The DECKの役割の1つめは「国際的な集客とコーディネート」でした。地域の言語・集客の課題を解決し、質の高い外国人デジタルノマドを誘致したことで、受け入れ地域の人たちからのフィードバックでも「こんな仕事熱心で、地域の人たちに対して敬意を持って接し、積極的に関わってくれる素敵な人達が世界にはいるんだ」「もっとこんな人達に来てもらい、仲良くなりたい!」というお声を多くいただきました。
The DECKが果たした役割の2つめは「コミュニティマネジメント」です。地元住民とデジタルノマドが深く、建設的に交流するための場と話題を設計。現地で参加者とともに行動し、彼らをサポートしてくれたコミュニティマネージャーは、日本ワーケーション協会の協力によりアサインいただくに至りました。コミュニティマネージャーとして尽力いただいたのは日本ワーケーション協会公認ワーケーションコンシェルジュの花田和奈氏森重良太氏。そして合同会社アットワールド代表の花田氏が主催する旅好きフリーランスのためのコミュニティ@worldのメンバーである佐藤眞理氏です。次の写真は、白浜の名物ワーケーションコンシェルジュ森重さんのお声がけに応じてくださった、地元のレタス農家さんや移住者との交流会のシーンです。レタスを収穫し、シャキシャキ新鮮なレタスをカニや豚肉といっしょに鍋でいただきました。白浜でのリアルな暮らしを聞ける貴重な場となりました。
The DECKの役割の3つめは「プログラムの設計」です。デジタルノマドは観光客とは異なる価値観を持っているため、訴求する際のコンテンツの見せ方に工夫が必要です。また、訴求先の媒体と手法も一般的なものとは異なってきます。それらを考慮し、サイト設計し、集客を行いました。集客と同時にオンラインコミュニティの構築を行うことで、参加者の心理的ハードルを下げることも重量です。The DECKのコミュニティコーディネーターである向井布弥は、今回の企画進行及び、オンラインコミュニティマネージャーとして参画しました。現地には代表の森澤友和が同行することで、フォローアップ体制を整えました。もちろん、地域の特色(寺院、食、自然)を、デジタルノマドのニーズに合う魅力的な体験に昇華したのは、共催いただいたリゾートライフ株式会社の従業員の皆様です。彼らが誠心誠意考え抜いてくださったコンテンツがあったからこそ、味わい深い内容のプログラムに仕上がりました。
 
白浜で生まれた「いつでも帰ってきたい」「ただいま」「おかえり」と言える温かいコミュニティは、今後、白浜町の「関係人口」として機能し、国際的な情報発信源となるでしょう。
The DECKは、Digital Nomad Week OSAKAでの実績、そして今回のSHIRAHAMAでの成功を足がかりに、今後も日本の各地域における「国際交流型ワーケーション」プログラムの企画・運営を推進してまいります。地方自治体、コワーキングスペース、宿泊施設事業者の皆様で、下記のようなビジョンをお持ちでしたら、ぜひThe DECKにご相談ください。
  • 外国人デジタルノマドの誘致と長期滞在化を検討したい。
  • 地域の歴史・文化資源を活かした高付加価値なワーケーションプログラムを開発したい。
  • オフシーズンの稼働率向上と国際的なネットワーク構築を目指したい。
私たちThe DECKは、「コワーキング」の力を信じ、日本の魅力ある地域から世界へ、新しい価値を創造してまいりたいと強く志しております。次期プログラムや協業に関するお問い合わせは、お気軽にどうぞ。
 
文責:The DECK コミュニティコーディネーター 向井布弥
今回共催いただいたリゾートライフのみなさま、ご尽力いただいたコミュニティマネージャーのみなさま、本当にありがとうございました!