CC(コミュニティコーディネーター) 蕭 倫恵(しょう ともえ) インタビュワー:CC 向井 布弥
大手企業やベンチャー企業、クリエイティブなものづくりをしている人など様々な方に日々、コワーキングスペース、シェアオフィス、ものづくりスペースとしてThe DECKをご活用いただいております。 そんなThe DECKではコミュニティコーディネーターが常駐しており、きらっと輝く人と交流できるイベントの企画や場づくりをしています。グローバル領域や地域連携プロジェクト、人材マッチングや起業支援など、それぞれのスキルを活かして活動中! 今回ご紹介するのは、「職人」として10年ものづくりの企業に勤めた後、 「日本のものづくりを世界へ」発信するべくThe DECKのコミュニティコーディネーターとして奮闘する蕭 倫恵(しょう ともえ)について。どんな人物なのかいろいろ聞いていきましょう♪
目次
- クリエイティブ系キャリアのルーツ
- いつ何が起こっても、ゼロから何かをみ出せる人は本当に強い
- The DECKのコミュニティコーディネーターに志願したわけ
- Make It Happen(困難を伴うアイデアを実現)したいこと
-ともえさんがクリエイティブ領域に足を踏みいれた背景を聞かせてください
音楽の仕事をしている母の影響でピアノやオペラに触れたり、イラストや漫画を描いたりするのが好きな芸術系の子どもでした。中学から部活で陸上競技に出会い、その後高校でもスポーツに打ち込む体育会でしたが、全国大会を目指すも怪我をして結果を残せなかったんです。その時に、怪我の原因になったシューズに興味を持ちました。
大学では、デザインを専攻。ここが私の「ものづくり」の原点です。創造する楽しさや、カタチにする大変さを経験しました。在学中、自分が経験した「スポーツ」と「デザイン」を掛け合わせた仕事につきたいと考えました。そしてオーダーメイドシューズをつくる創業間もない会社にご縁をいただいて新卒で入社しました。作っていたのはオリンピック出場選手にも使われる製品で、全て日本の職人が手がけるメイド・イン・ジャパンでした。そしてこの会社で世界に通じる日本のものづくりマインドを得ました。
「スポーツ」や「デザイン」の世界は、「個人の能力」が見られます。一試合、一作品ごとの勝負で厳しいジャッジがあり、その意味では極めてフェアな世界。年功序列ではなく、最終的には実力を認め合う世界です。そこに惹かれたのだと思います。
-個人的にともえさんの魅力に迫りたいのですが、一緒に働いていて感じる「受け止める力」というか「折れない心」というか、「諦観(本質を見ている)」のような・・・その精神性はどのように築かれたのですか
うちはサラリーマン家系ではなく自営業の家系で、商売の話はよくされていました。事業が上手く行かずにマイナスになって大変な所も見ました。その時は家族で助け合うしかなく、「自助力」は重要だと身をもって経験しました。「リーマンショックが、、社会の流れが、、 」とそんな事は言っても仕方がなかった。しかも、それはゆるくも約8年ほど影響が続いた長丁場でした。
そんな中で、” いつ何が起こっても、ゼロから何かをみ出せる人は本当に強い ”そう思いました。しょんぼりしていたって、何も変わらない。コロナ禍になって、いっそうそう思います。今はより多くの人と繋がることができ、何が ” 価値 ” となるか分からない面白い時代です。反面、安定していたものが簡単に崩れ去る時代でもあります。しがみつける答えはなく、ますます個人のマインドで結果に差が出る社会になっていると思います。
自分より才能やセンスのある人は、たくさんいる。でも、そんな中でも「自分とは何か?」の自己探求は人生最大のテーマだと思います。「自分らしさ、自分にしかできない事」を今も追求しています。
それを使って、周りの人に良い影響を少しでも与えられたら嬉しいです。無理のない見せ方で、誰か一人の人生にでも、響いてくれたら。また、それが繋がって誰かに響けば。The DECKには、これから何かをしようという方が集まる場です。私自身もコミュニティコーディネーターでありながら、その一人です。
- だんだんともえさん像が浮き上がってきました。改めてThe DECKのコミュニティコーディネーターに志願した理由を詳しく教えてください
約10年ものづくりに携わり、現在の「職人」のジレンマを感じました。全てがそうではないのですが、職人の世界は少なからず伝統的な考えや慣習を重んじる傾向が大きいです。
一日も欠かさず、同じクオリティで、毎日、ものをつくる
分業制であれば、自分がその仕事をしないとひとつの製品が完成しません。外部に出る事もなく、毎日の環境は職場のみ。一方で新しいアイデアを取り入れ、新商品を出し、売り上げに貢献することも大事です。経営者は従業員にそんな「価値」を生み出す人材になってほしいと思いつつも、従業員は毎日同じ作業に追われるという環境でした。
私はこのような葛藤を抱える人や組織が変わることができる「仕組み(文化)づくり」をしたいと思っています。私自身が現場を知る「職人」というベースを生かし、「ものづくり」「デザイン」そして「海外」「コミュニティ」というマインドセットを取り入れ改革をしていきたいと思っています。
日本のものづくりを世界へ
具体的には、自分が経験した小規模事業者に寄り添う仕組みづくりです。良い製品を心を込めて作っている人や企業が、もっと輝く社会にしたいんです。その為には「仕組みづくり」や「資金」は重要だと思いました。日本の良い製品が、適正価格で売れて、開発資金や人材教育の余裕もできる、そこでまた良いものが生み出されて、売れて・・。という、よい循環をたくさん生み出したい。そんな循環ができる所は、少ないのではないかと感じました。
小規模な所では毎日、同じ製品を作って売り上げをあげ、生活も必死な所がたくさんあります。「資金」についてはともかく「仕組みづくり」など、考えている余裕などないと。「ものを作る」のが仕事で「仕組みづくり」を考えるのは、自らの仕事じゃないからとも言われます。これは自論ですが、ものづくりは人の生活の根本だと思っています。自分たちの生活がより便利に、より豊かで快適になるために、道具を作ってきた歴史があるからです。だから、ものづくりを職業にしている人の生活こそ、その理想に近くなって欲しいです。
閉鎖的でみんな必死な状態、果たしてそれは健全な状態なのでしょうか?
理想的な形になる為には、どんな環境・どんな仕組みが必要なのか、まず自分が外からの視点を取り入れ、経験しなきゃ答えの一個も出ないや。と思い、「ものづくり」「コミュニティ」「海外」をコンセプトのど真ん中に置いて発信し、実践しているThe DECKで働くことにしたのです。
-まさにThe DECKは「つくる・つながる・グローバル」の3つの特徴がありますね。
コワーキングスペースなのに、本格的に「ものづくり」にフォーカスしていて最初は驚きました。しかも、コミュニティスペースとしてオープンな環境で、色々な刺激もある。何よりものづくりに対してリスペクトなマインドがある会社です。代表森澤自身がものづくりの思考を持った経営者であり、海外の視野を持ち、コミュニティの力を信じている人物です。
しかしながら、周りの人に「ものづくりスペース」とご紹介してもピンとこないリアクションが返ってくることが多いのが現状です。
- The DECKの場を活かしてMake It Happen(困難を伴うアイデアを実現)したいことは何ですか。
考える事、つくる事は人間固有のものです。それを組織化し、経済の仕組みに取り入れたのが製造業。技術と仕組み・組織、それを支える文化は密接な関係にあります。新しい技術が、生活に大きな影響を与え、文化を形成していく。その技術の源は「創造」であり「発想力」なんです。これから、ますます「創造が価値」になる事は間違いありません。創造の場として、The DECKはすでに想いを持って場所をご提供しています。自分のアイデアが形になって残る、そのプロセスが重要と考えます。
今後もThe DECKでは「製品開発」「プロダクトデザイン」「クリエイティブ」「イノベーション」「最先端技術」をどんどん実験・発信し、ご利用いただく皆様のお役に立ちたいと思います。私もスタッフの一人として、ものづくり×デザイン×ビジネス、それぞれが進化し事業として発展していく場にしていきます。ご利用いただく皆様にとっても、これらのアイデアだけでも持つことができれば絶対に強いと思います。これら3つの手綱をゆるく持ちつつ、進むだけで違う世界に行けるのですから。
ものを作っている人が、その魅力を生かす知識をつけ、開発やデザインにも携わり、ビジネス面でも成功する。経営者だけが、それを行うのではなく従業員も人材として育つ環境を整える。みんながオールラウンドプレイヤーの日本職人。そんな人材が増えたら、きっと面白いと思います。The DECKなら、そこに何か良い形で触れられると確信しています。たとえば週の1/3は作業着でものづくり、1/3はデジタルデザイン、1/3はビジネススタイルで営業、ベースの職業は「職人」です、というスタイルの職人さん。そんな様々な価値観を持った人達の活発なコミュニティがThe DECKでできたら嬉しいです。私もまだまだ自分の世界を広げてみたいと思います!