レポート

Co-Learning for with CORONA vol.2 レポート


Co-Learning with CORONAは、The DECKの新しいイベントシリーズです。

自分一人だけで考えたり、取捨選択することに限界もある情報過多の時代では「考える」きっかけを提供してくれる人との思考や議論の場が大事になります。このシリーズでは、思考を加速するThinking Accelerator(TA)をお招きしてインプットトークをいただいたあと、参加者のみなさんと双方向的にディスカッションすることで考えを深め、さらなるアクションにつなげていきます。

 6月に開催された第1回は、「緊急事態宣言収束後に始まる、緊急事態とは」というテーマでニューノーマルな世界でのワークスタイルやDXについて議論しました。今回、第2回は梅田総合法律事務所のお二人をTAにお招きして弁護士と考えるWork Style Design~脱・全人格的労働をテーマに少人数で濃密な議論を行いました!

 TAのお二人の所属する梅田総合法律事務所は、大阪と東京にオフィスを構え、スタートアップから大企業、個人の方にいたるまで多くのクライアントを持ち、様々な強みをもった弁護士が所属されています。「どこにも負けない仕事をしよう」というのがモットーです。

 弁護士の石田さんは、民事事件から企業の法務案件まで幅広くカバー。特に労務関連の案件に強みをお持ちです。クライアントのリスクを最大限に避けて一緒に成長していけるような弁護士を目指しておられます。山口出身のなんと6人きょうだい!

 弁護士の岡本さんは、会社員を経て現職へ転職。現在弁護士として予防法務から訴訟まで担当されています。会社員時代の現場感覚もそのままなことから、弁護士らしくないと言われることも多いそうです。

 明るいお二人の弁護士による怒涛のようなトーク(!)から法的観点から沢山のヒントを得られるセッションとなりました!

 目次

 

  1. 全人格的労働とは
  2. 今後ますます重要な「予防法務」の考え方
  3. 労働者がきちんと知っておくべきこと
  4. 日本に馴染む?その①リモートワーク
  5. 日本に馴染む?その②電子契約

全人格的労働とは?

 ほとんどの人にとって「働く」ということは自分の人生と切っても切り離せません。せっかく同じ時間を使うなら、その時間をよくしたいという気持ちは全員に共通するもの。ただ、仕事に自分の人生や生活の全てを盲目的に捧げてしまうような状況がこれまでの日本の労働環境にはびこってきたことも事実です。石田弁護士はそうした働き方を「全人格的労働」と呼ぶということを紹介。こうした働き方によってネガティブな状況に追い込まれる方もいるという話がありました。

 ただ与えられた仕事や環境に対して盲目的になるのではなく、自らワークスタイルを選んでいくという姿勢も忘れないことが大事、と強調します。これまで石田弁護士が見てきた事例でも、例えば飲食店の勤務で休憩も取らずに13時間も働いていた人がある日突然出勤しなくなったという話が紹介されました。真面目であるがゆえに、自分の体や精神状況に留意せずに働いてしまったということがこうした状況を生んでしまいました。

 何が問題だったのか、と振り返ると、まずは働かせる側(管理者、上司)が意識をして、休憩時間や従業員の健康管理、面談実施など行うべきだったと石田弁護士は指摘します。従業員の「迷惑をかけてはいけない」という気持ちから負のスパイラルに陥ってしまうこともあります。病気になられたり、最悪の場合亡くなられて訴訟問題に発展したり、企業の社会的責任が問われることも…。こうした事態になることを未然に防ぐために、弁護士ができることがたくさんあるということをTAの二人からお話がありました。

今後ますます重要な「予防法務」の考え方

 みなさんは、「予防法務」という言葉をご存知ですか?弁護士のみなさんにやってくる仕事は、「紛争になってしまったので助けてほしい」というものが多いそうですが、一部に今後起きる可能性のあるリスクをどうやって回避するべきか?という相談もあるそうです。そうしたリスクを回避するための法的アプローチを「予防法務」と呼ぶそうです。例えば、「大きな取引をする際いつもと違う契約書をまくのだがリスクはないか?」といった相談や、「カタログを作りたいけれどこの表現で大丈夫か?」という相談もあるそうです。紛争が起きてからでは、傷口が深くなって遅いということもあり、最近では多くの弁護士がこの「予防法務」に意識を払っているようです。

 The DECKの森澤からは、法務部でもない普通の人のなかには、「紛争にもなっていないこんな話を弁護士の方に聞いていいんだろうか?」という迷いもあるかもしれない、という話がありましたが、弁護士のお二人は「ぜひまずは相談をしていただきたいです!」と力強く言います。もし領域的に弁護士がカバーする案件でなかった場合は、この分野は社労士、この分野は税理士、といったように交通整理をすることもできるということです。企業で勤めたり、会社経営やフリーランスとして働くみなさんが、より「予防法務」に対して意識を高く持つことが求められているということが分かりました。

労働者がきちんと知っておくべきこと

  たとえば、パートでも有給休暇があることや、パートであったとしてもいつでも解雇ができるわけはないということをしっかり知っておく必要があります。また、上司から就業時間外に連絡があり、レスポンスをすぐに求められるとしたら、それは本来的にNGですと石田弁護士は言います。また、自分の労働条件や就業規則、賃金体系についてちゃんと見て知っていますか?と岡本弁護士は参加者みなさんに投げかけました。自身も会社員だった時、就業規則がどこにありますか?ということを管理者へ聞くだけでその場の空気を壊してしまったように感じたこともあったようです。しかし、どこに就業規則があるかということを明らかにしておくのはそもそも会社の責務であり、従業員は当然就業規則の内容についてよく確認しておく必要があるのです。

  法制度をうまく使って、働き方をデザインする

 弁護士の二人からは、法制度をうまく使って、働き方をデザインすることが大事だという話がありました。そのために知っておくことはたくさんあります。例えば報酬体系(日給制、月給制、年俸制、成果主義、業績連動型、出来高制、歩合制、ボーナス制、ストックオプションなど)や、雇用条件(有給、福利厚生、在宅勤務など)について知識を持っておくことも大事です。これらの知識をかけ合わせて、自分はこういう働き方がしたいからこの制度を利用して働いていく、といったように自分で働き方を選び取ることが必要だと岡本弁護士は言います。

 ここまでの流れを受けたブレイクアウトセッションでは、自分や自社にはどのような働き方が合っているか?ということを参加者みなさんでブレストしました。参加者の中には、コロナ前とコロナ後で働き方ががらっと変わったという方もおられ、今後の働き方について法制度の観点から捉え直すのは良い機会になったというコメントもありました。

日本に馴染む?その①リモートワーク

  日本の労働環境では、労働時間や頑張りで評価されてきたということがあります。しかし、リモートワークが導入されれば、一度その概念から離れる必要があります。リモートワークを導入することで、管理者側の不安として、従業員がもしかしたらさぼっているんじゃないか?と思ったりすることもあるかもしれません。しかし、今までの思考回路からは一旦離れて、どのように仕事の成果をはかるのかを各企業ごとに決めていかないといけないと石田弁護士は言います。リモートワークを導入した時に、物理的に従業員が働いている姿を目にすることができないということは割り切った上で、どのようなコミュニケーションをとっていき、どう評価していくのかを一から考えていく必要があるのです。

 プロセスに重きを置いてきた日本の労働環境においては、リモートワークを導入する際には、完全な成果主義を導入するということまではいかないにしても、タスクで管理するのではなく業務の成果物で評価するということも必要になります。その上で問われるのは上司によるマネジメント能力や、サポート力。いつまでに仕事を仕上げるのか、進捗はどうかということを、リモートワークを前提としたコミュニケーションで確認していくことが求められます。依頼したいことを明確に言語化することが重要で、「察してほしい」、「分かってほしい」はNGであるということを管理者も従業員も意識することが重要になります。

日本に馴染む?その②電子契約

 最後のトピックは電子契約。電子契約はメリットとしては事務処理削減、印刷代不要、契約の管理が容易になるなど様々あります。デメリットとしては、新たな導入検討をする上で契約先の負担にならないか、という点や、サイバー攻撃の可能性、また権限のない方が操作する危険性など。これらのデメリットに関しては、相手の負担にならないように普段からの関係づくりを重点的に行うことや、契約段階に応じて都度フォローする手法があると岡本弁護士は言います。サイバー攻撃に対しては、セキュリティ対策をしているシステムを利用したり、自社内でセキュリティ対策を行うなど防御策があります。

 より意識しておくのは、契約相手側で権限のある方がきちんと操作しているか?ということです。メールの宛先に権限のある人を加える、権限のある方に電話をかける、権限のある人だけが分かるパスワードを用意するなど色々な手法があると紹介いただきました。どれもとても難しい対応というわけではなく、これら一つ一つのことをやっていったという記録をきちんとしておくことで、証拠も残ります。デメリットをカバーするような手立てを取ることで十分にメリットを享受することができ、電子契約はこれからの企業経営の心強いツールとなるのではないかとお話いただきました。

 その後ブレイクアウトセッションに入り、再度参加者同士でディスカッションを行いました。リモートワークに関する話題では、例えば総務の方など出社することが比較的強く求められる職種の方もいる一方で、リモートワークが容易な職種もあり、社内で不公平感が出てしまうといった現場の実例について共有いただいたり、研究職の方からは、副業をすることで自社の技術が他に渡ることを恐れてセンシティブになることもあるというお話がありました。それらの事例に対して、弁護士の二人からは丁寧なフィードバックをいただき、参加者の皆さんがさらに「思考」を深める良い機会となっていたようです。オンライン会議システムのRemoを使ったその後の二次会では、話題がつきずに議論がとても盛り上がりました!

 今回のセッションは、少人数での開催であったこともあり、弁護士のお二人のお人柄もよく分かり、弁護士の方をより身近に感じることができました。また、参加者のみなさんの普段のお仕事に直結するような話題もたくさんあり、より具体的にイメージを持っていただくことができたのではないかと思います。明るく楽しいセッションを展開いただいた弁護士の石田さん、岡本さん、本当にありがとうございました!

 今後もこのCo-Learning with CORONAシリーズでは、様々な分野のスペシャリストをお迎えして、皆さんの「思考」を加速するお手伝いができればと思っています。今後ともどうぞ楽しみにしていてください!