レポート

オンラインコワーキングスペースにおける、バーチャル保健室の価値


本企画は、みんなのバーチャルコワーキングジャパン(以下、みんコワ(※注1))の運営に携わるコワーキングスペース(※注2)の一つ、大阪堺筋本町にあるThe DECK(※注3)と、京都で医療向けAIや治療用ゲームの開発行っているBonBon株式会社(※注4)の共同企画です。

2020年5月、コロナウイルスの発生に伴い、現実のコワーキングスペースから、オンラインのコワーキングスペースに移行する動きが見られました。これと同時に医療機関におけるコロナウイルス二次感染を警戒し、病院を訪れる敷居が高まってしまうという問題もありました。そういった環境の中で、「オンラインコワーキングスペースに、医師による健康相談スぺースを設置することにより、訪れる人々の健康維持に役立つのではないか」という考えから、TheDECKが他のコワーキングスペースと共同開催している「みんコワ」とBonBon株式会社の共同で、Remo(※注5)にて「バーチャル保健室」を試験的に進めるに至りました。

2時間/週という短時間の保健室でしたが、計5週間の試行の結果、計9名の来訪がありました。相談内容は自身(あるいはその子供)の健康相談から、環境衛生の相談もありました。そのなかで、場所を選ばないオンラインの強みが活かされた一例、病院に行くか迷う層の不安を解消できた一例を挙げます。

 

国外の女性の慢性めまい症

国外在住の成人女性。めまいがあるが、外国人に対する医療費が高く、病院を受診しにくく困っていたところ、バーチャル保健室のことを知り訪問されました。

めまいは緊急治療を要する病気から、様子を見ていい病気まで、さまざまな原因で生じます。その症状について詳しく聴取することで原因をある程度推測することができます。この女性の場合は1カ月前からなんとなく頭がフワフワするといった、特徴のはっきりしない訴えであり、精神的な原因から生じている可能性が疑われました。さらに聴取してくと、最近ストレスが多かったことなどが明らかになり、やはり、不安による症状であると考えられました。

もちろん、不整脈や頭蓋内疾患などの危険な病気を完全否定できるわけではありませんが、可能性は低く、ひとまずは経過観察で良いでしょうとお伝えし、安心されました。

このように海外にいる日本人労働者で病院へのアクセスが難しく、症状に不安は感じているものの、病院を受診しにくいと感じる方の場合、バーチャル保健室は有用ではないかと考えられました。

 

リンゴ病が疑われる小児

2日程前から頬が赤くなっている男児について、お母様からの相談でした。保育園の先生にも「何かよくわからない」と言われた、と心配されていました。筆者が拝見したところ、男児の様子は元気そうではあったものの、確かに両側の頬が真っ赤になっており、その特徴的な皮疹からリンゴ病(伝染性紅斑)の可能性が高いと考えました。リンゴ病の場合、皮疹が出現したときにはすでに感染性は弱まっているため、今後保育園への登園を制限する必要はないこと、皮疹はあっても特に害はなく1週間程度で自然治癒することがほとんどであることをお伝えすると、非常に安心されていました。もし今後万が一、発熱や倦怠感、皮疹の増悪などがあればお近くの小児科を受診されるようお勧めしました。

また、お話をしながらお母様と一緒にGoogle検索のリンゴ病の画像やリンゴ病の説明ページを、画面共有機能を用いて供覧することによりお母様自身の理解も深まったようでした。簡易な症例であれば、患者様と一緒に教科書を読む感覚でお話しできることが確認できました。

このように、病院に行くほどしんどそうではないけれど、医学的な意見を聞きたい場合にネットで簡単にアクセスできること、オンラインの画面共有機能を用いることにより、PC上、あるいはインターネット上の情報をリアルタイムに共有しながら患者様に説明可能であることも、バーチャル保健室の強みでした。

 

※注1 みんコワ(HP https://mincowa.com/

みんなのバーチャルコワーキングジャパン(みんコワ)は、誰でも24時間無料で参加できるオンライン上のコワーキングスペースです。

※注2 コワーキング

オープンなワークスペースを共用し、各自が自分の仕事をしながらも、自由にコミュニケーションを図ることで情報や知見を共有し、協業パートナーを見つけ、互いに貢献しあう「ワーキング・コミュニティ」の概念およびそのスペースを指します。

※注3 The DECK(HP https://thedeck.jp/

ザ・デッキ(The DECK)は大阪・堺筋本町駅直結のコワーキングスペースです。

※注4 BonBon株式会社 (HP https://bon-bon.co.jp/

感情と情報を結び、あたらしい医療をつくる会社です。

※注5 Remo (HP  https://remo.co/

テーブルを自由に移動しながら会話できるウェブ会議システムです。

 

執筆:西原悠

BonBon株式会社の医師

循環器を専門としている卒後6年目の内科医。

2020年4月より、医療用AIおよび治療用ゲーム開発をしているBonBon株式会社にて

メディカルマネージャーを兼任。バーチャル保健室では個人的な健康相談や、仕事、

生活に関する医学的なアドバイスを行った。