【本部】

古田さんは2021年11月に開催された

5Gソリューション創出コンテスト「地域課題解決 5G DX AWARDS 2021 in 大阪」

一般部門・アイデア賞受賞「多数接続から限定接続への切換えによる低遅延伝送」も受賞されていますね!

IoTデバイスの開発・販売を手掛けるスペインの会社の日本現地法人TSTジャパン株式会社を立ち上げられた古田さんですが、IoT業界で活躍されるにいたった背景をお聞かせください

【古田】

大学卒業後京都のメーカーで40歳まで駐在員をしていました。そのうち10年くらいイギリス、ドイツなど、海外におりました。駐在期間中に、デジタル化、EU統合、インターネット普及と社会も技術を大きく変化しました。社会の流れとは逆にアナログ世界で仕事がしたく、電磁波ノイズ(EMCと言います)のエキスパートを目指し、40歳でドイツの認証機関に転職しました。

その後“ものづくり”により関わりたく、部品メーカーに再転職、EMCとBluetoothを担当しました。BLE(Bluetooth Low Energy)前身のWibree規格策定員会のメンバーで、様々の企業、国の技術者と電話会議、F2Fの会議(3ケ月ごとの国際会議)があり、バックグラウンドの異なる様々な国籍の方たちと、議論し工夫して、プロジェクトを進めていきました。それはたいへんでしたが、めちゃくちゃ面白かったです!そこで新しいもの創出し、市場に普及させていくために、協業していくかというプロセスや文化を学びました。TSTジャパン創業のベースになっているかもしれませんね。

50歳でアメリカの企業に転職。大阪府と連絡をとり、日本の現地法人の立ち上げに携わりました。その後化学メーカーに転職し、EMC関連業務に携わっていましたが、新しい製品・事業開発を行う機会を得て、IoTを始まることができました。開始当初は、まだIoTという言葉自体を認知されておらず、IoTを進めるためにどうしたらいいかということで、社内教育や他企業と連携を行うことですそ野を広げる活動をしました。

また欧米において多くのIoT開発実績のあるスペインのTST社(Technologias, Servicios, Telematicos y Sistemas,S.A)を見つけ、日本国内向け製品の共同開発に携わりました。その後、TSTのCEOが日本市場への本格参入を決断し、日本の現地法人を創設となりました。私は2020年に定年退職でしたので、日本現地法人の立ち上げを引き受けた次第です。

【本部】

波乱万丈の人生ですね!今でこそ転職がキャリアとして見られるようになってきたと思いますが、当時40代50代での転職は評価される時代ではなかったのではないでしょうか

【古田】

そうですね。39歳の時に、1つの会社に留まらず、転職して技術者として手に職をつけていく道を選びました。今でも仕事を続けていくことができているので、あの時の決断は間違っていなかったと思います。

【本部】

引退のつもりが、スペイン企業の日本現地法人立ち上げを受けた理由をお聞かせください

 【古田】

在職時に自分が開発に携わった製品・事業は、自分の子どもみたいなものなので、フォローしたいという思いがありました。またTSTのCEO(Franciso氏)と技術者の人柄とIoT開発への取り組みにも惚れていました。TSTは、実証実験でなく、実社会でのIoT活用を進めております。これは社会貢献に繋がる事業で、日本でも実践したく日本現地法人立ち上げを引き受けました。

また、過去の海外での駐在経験や、外資企業で現地法人を設立する経験を通じて異文化にあこがれがありました。そして、今までの経験を活かした動きができると感じTSTジャパン株式会社を設立しました。TSTスペイン本社の社長も、日本滞在VISAを取得し、一緒に。スペインと日本の間で面白いことをやろう!と意気投合し、実現しました。しかし今はコロナで彼は来日できず、お互いにリモート業務です(笑)。

【本部】

日本法人の拠点としてThe DECKにご入会いただいたのですね ご入会までの経緯や決め手を教えてください

【古田】

大阪府の援助を受けて海外に日本の現地法人を立ち上げた経験があったので、また大阪府に相談に行き、設立援助をいただいております。住所を使える事務所が必要でした。大阪府の担当者にシェアオフィスをいくつか紹介していただきましたが、その中でもThe DECKを勧めていただきました。海外企業でしたら、グローバルネットワークがあるThe DECKは面白いですよと。

実はシェアオフィスは3つくらい見に行き、別の拠点の会員にもなっていたのですが、最終的にThe DECK代表の森澤さんの人柄と、立地の利便性はもちろん、運営スタッフともコミュニケーションが密に取れるという部分、もう一つはものづくりFABスペースに魅力を感じThe DECKの入会を決めました。

まとめると

-運営メンバーの人柄

-単に場所貸しではなく生きたコミュニケーションが行われている

-ものづくりを支援している姿勢

です。とても明快でしょ。

【本部】

励みになります!

ご入会の際、start upということもあり利用時間やコストについてご懸念があったようですが、The DECKは今年4月より、利用時間の延長及び利用用途に合わせた柔軟な会員プランをリリース予定です

古田さんの期待にも添えるよう進化してまいりますので、今後も忌憚なきご意見を頂戴できればと思います

【古田】

頼もしいです。強いて希望を申し上げるならば、ものづくりFABスペースの機材がより充実していってほしいと感じています。IoT系の実験や電気系製品制作で必要な測定器が充実していくと、個人的にはすごく使いやすいなと思います。
メンバー(協賛)企業が、製品・部品・技術セミナーなどの提供することで、社外評価・共同開発、共同販売などを進める場になれば、すごく素晴らしいですよ。

 【本部】

具体的なご意見ありがとうございます

ものづくりFABスペース含め、常に進化していく姿勢で運営を続けてまいりますので、末永くご利用いただけたら嬉しいです

大型展示会にご出展される際の製品チラシを弊社スタッフの簫(しょう)が手掛けさせていただきましたが、反響はいかがでしたでしょうか

【古田】

一般目線で丁寧にヒアリングを重ねてくださったところがすごくありがたかったです。私は技術者なので、どうしてもマニアックといいますか、技術的なことを説明する傾向があります。打合せの中で一般の方に伝わるPRポイントを言語化していただき、レイアウトもどうしてそのレイアウトにするのかを考えて提案していただきました。メーカーと一般消費者の間をしっかり繋げてくださる形で、エンドユーザーさんの視点に応えるわかりやすいチラシを制作していただけました。IoTは、誰でも気楽に使える形にすることが目標です。だからわかりやすいというのは特に大事ですね。

今回出展した展示会は、CEATEC(日本最大の電子製品展示会)というもので、出展を通じて大企業とコンタクトを取ることが出来ました。パンフレットは行政やシステムを販売している会社にお見せした際にも、わかりやすいのでちゃんと話を聞いていただけますね。資料送ってよと言われた時もデータをメールで送るだけで、理解をしていただけますので助かっています。社内会議で共有してもらえているのであらゆる場面で有効活用しています。

【本部】

古田さんは話しかけやすく、お話するとお話が面白くて引き込まれます。技術畑では珍しいタイプなのかなと思います。start upで展示会出展や、営業、マーケティングをはじめ経営のあらゆる面を同時に実行していかれる際にその人間力が最大限に活かされると感じますが、もともと人と話すことがお好きなのですか。

【古田】

以前勤めていた会社の営業マンには「ようしゃべる技術者やな」って言われていましたね。

ものづくりは、困ることの連続、失敗の連続なのですが、あらゆる場面でいろんな人と対話していることが助けになって、最後の最後で、誰かが手を差し伸べてくれます。

海外の技術者は交流をよくしますし、ロビー活動を行っています。開発の会議でも親睦会は必ずと言っていいほど行います。夜に飲食を共にし、雑談します。その中で人間関係ができ、チームビルディングが自然にできていくんです。その文化や経験が自然と自分の中にも根付いていて、今活きているのだと思います。海外で開催される学会などにも参加していましたが、本当に日本人は少ないです。海外出張になると急にハードルが高くなるのですね。
スポーツ・文化分野では日本人は、海外とも積極交流しているのに、工業分野では極一部の企業・技術者しか、国境を越えた仕事ができていないような気がします。がんばれニッポンです。

駐在員時代に、頭の中がわりとヨーロッパっぽく変わっていきました。自由な発想で、自己判断するヨーロッパの文化に感化された部分もあります。もちろん日本がすばらしいことも、すごく多くあります。良い部分を融合できれば、すばらしいです。

【本部】

これからMake It Happenしたいことを教えてください

【古田】

自社IoT製品を2025年までに国内(特に地元)実運用させるためにチャレンジしていきます。TSTジャパン株式会社は小さい会社ですが、2025年ころまでにはスペイン本社と同じくらいのチームを作りたいと思っています。

【本部】

技術者や営業、広報チームなど社内外様々な人と関わることで助け合えると感じます

【古田】

まさにThe DECKの魅力はそこにあります。いろんなバックグラウンドをもった企業や人材が集まってハブになっている。フィーリングや技術が重なる人とサービス連携したり、融合できる。それを民間企業として”coworking”を推進しているところに、行政とは異なる民間の力を感じますし、期待しているところです。地域連携をもっと推し進めてほしいし、私も参画したいところです。それに、IoT開発+実現コミュニティ作りをThe DECKと一緒に力を合わせて取り組んでいきたいです。

【本部】

IoTに関わっている営業マンがいるかもしれませんし、私の身近にはIoTの会社を立ち上げた高校生2人がいます

【古田】

かっこええ!ぜひうちの会社と一緒に何かやらせてほしいです。若い発想や異文化の視点でごちゃごちゃ実験していかないとええもん生まれてこないです。The DECKはまさに年齢、性別、国籍、業界がごちゃまぜの異文化交流スペースですから、そういったところをリードしてほしいと願っています。面白い人、若い人、どんどん紹介してください!

【本部】

はい!こちらこそこれからもよろしくお願いします。インタビューにお応えいただきありがとうございました。