早春の大阪南港、ここに日本のイノベーションエコシステムと南米の才能が交差しました。
南米各国から情熱に満ちた学生たちが大阪に集い、3ヶ月間にわたって最新のテクノロジーを学び、実戦形式のプロジェクトに臨むプログラム「EMFUTECH」に参加しています。代表の森澤が、そのプログラムの一環での学びとして、日本のイノベーションエコシステムを彼らに紹介する機会を得ました。昨年9月にもいただいた機会でした。
テーマは前回に引き続き、日本のイノベーション・スタートアップエコシステム。
これを昨年の参加者からのフィードバックを受けてブラッシュアップしてお届けしました。過去30年間の日本の世界での経済的なプレゼンスの変化とその背景にある社会性の特徴を、彼らの隣国であるアメリカの特徴と対比して示しました。比較的異なる文化背景を持つ彼らに対し、日本の社会性とその変化、さらにテクノロジーの関係を示すことで、深い議論を引き出すことができました。
講演の中で、双方向に質問や意見交換を交えながら学ぶ時間は、私たちにとっても学びの多いものでした。
それを象徴するエピソードがあります。導入部分のスライドで使用したタコスの画像(下の写真)がメキシコのものとは異なるものだったようです。「それじゃない」との総ツッコミを受ける場面は、文化の理解は簡単ではないと改めて感じさせられる一幕でした。
あとで教えてもらったところによると、日本人の多くが認識している、トマトとレタスが刻まれ、チーズがまぶされているものは、テキサス風のアレンジが入ったタコスなのだそう。さらに、包み込むトルティーヤは硬め。
対するメキシコのものは、トルティーヤが柔らかめで、コリアンダーとオニオンを刻んだものが入っているそうです。さらには地域によってトルティーヤに使われるコーンの種類が異なることから、黒色に近いタコスもあるそうです。
このことは、広島の人に大阪のお好み焼きを見せてしまう、あるいは、カリフォルニアロールをもって寿司と呼ぶような、アイデンティティに深く根差した問題なのかもしれません。「ソレジャナイ」と言いたくなりますよね。
講演の最後には、大阪で開催される大阪・関西万博についても触れました。
東京オリンピックでは得られなかった日本経済のブースターとして期待されるこの万博。その公式マスコットキャラクターであるミャクミャクの突飛な風貌が話題を呼びました。いくつかの候補の中からそんなミャクミャクが選ばれたことが、大阪らしい自由で開放的な気質を反映したエピソードである、として紹介しました。
結果的に、日本についての深い理解と共に、ここでしか得られないリアルな体験を南米の学生たちに提供できたと感じています。3ヶ月間という短い時間ですが、この期間を通じて彼らが日本の本質を感じ、自身の視野を広げ、新たな視点やアイデアを持ち帰ってくれることを期待しています。
そして、私たち自身も彼らから学ぶことが多く、その情熱と好奇心に刺激を受けています。その後何名かの参加者がThe DECKに足を運んでくれたことで、私たちの活動についても深く理解してもらえました。それは彼らがThe DECKの大切にしている「Make It Happen」の理念を実践した結果であり、私たちにもとって大きな喜びでした。
このような国際的な交流を通じて、イノベーションエコシステムがこれからどのように進化していくのか、そのヒントを見つけることができると信じています。未来は私たちがつくるもの。それを共につくるために、これからも様々な経験を通じて交流を深めていきたいと思っています。
3ヶ月間、彼らは最新のAI、プログラミング、IoT、VR/AR(XR)、ロボット工学などのスキルを学び、また自身でイノベーションを担う人材として活躍することを目指します。南米からの若者たちが、日本のイノベーションシーンをさらに活気づけてくれることを期待します。